WSJ紙に「なぜ中国人の母親は優れているのか」というセンセーショナルな記事が載り、米国で話題騒然となった回想録。
両親が生まれる前に米国に移住した中国系移民で、ハーバード大学卒、ハーバードロースクールを経てイェール大ロースクール教授という「分かりやすい」エリートである。回想録の形はとっているが、「西洋人の親は甘すぎる。中国式の教育方針が世界で一番だ」と喧嘩を売るような教育論だ。
スパルタ式どころか、書いてあることが本当であれば、ほぼ児童虐待だ。わが子に相談もせずに演奏する楽器を選び、完璧にできないと次々と罵声を浴びせかけ、零下の屋外にコートも着せずに放り出す。オーディションで5時間ぶっつづけに演奏し飢えている娘に「練習が済んでから」と夕食を与えない。ピアノ曲を翌日までにマスターしなければドールハウスの家具をひとつひとつ寄付してしまうと脅し、「次に完璧に弾けなかったら、あなたのぬいぐるみを全部燃やすからね」と怒鳴りつける。友達と遊ぶ事も、お泊まりも、学校の演劇に参加することも、ピアノとバイオリン以外の楽器を演奏することも禁じられ、自分で課外活動やお稽古ごとを選ぶことも許されない。海外旅行中でも1日として練習を休むことは許されない。熱があったら解熱剤を与えられて練習をさせられる。Aより悪い成績を取ることや、すべての教科で1番以外になることも禁じられている。
著者が意図していないところで可笑しい場面がけっこうあるのだが、80%がわが子自慢と西洋人の親の批判だというのが回想録として失敗しているところだ。
だが、高校生の娘に読ませたところ「タイガーマザーでなくてありがとう」とやけに親切になった。意外なところで効果がある本かもしれない。