時代性を考慮すればグランジうんぬんの文脈で紹介するのが普通です。
けれど実際のところ、彼らがここでやっていることは、
初期のブラック・サバスとバッジーを足したような、
1970年代はじめのヘヴィ・メタルのプロトタイプ…
に限りなく近いような音楽であると思われます。
「Rusty Cage」の妙なスピード感は、まさにバッジーを彷彿。
「Outshined」のドゥーミーなうねりは、サバスだ。
よくレッド・ツェッペリンがどうとか言う人もいるが、
そういった印象は、本作におけるクリス・コーネルの熱唱からきたものである。
次作『SUPERUNKNOWN』ほど洗練されず、
かといって前作『LOUDER THAN LOVE』ほど分かりにくくもない。
絶妙なバランスのヘヴィ・ロック・アルバムになっていると思う。
楽曲の構成や演奏部分は前作とそう大差ないものだが、
大きく異なるのは、ロバート・プラントに近づいたクリス・コーネルの歌唱だろう。
クリスを歌のうまいハード・ロック・シンガーとして評価できる感じというか、
堂々とした歌いっぷりと、前作比で200%は歌心に溢れたような熱唱は、
クリスがヴォーカリストとして目覚めた最初の作品ではないかという感じがする。
だから前作と同様に重たいサウンドではあるけれど、聴きやすい。馴染みやすい。
以前のような、ダレダレのいい加減な歌い方はしていないのである。
なお、次回作を手がけるプロデューサーのマイケル・ベインホーンは、
アーティストの音楽性をバラして再構築してしまうような、
そういう鬼才プロデューサーで知られる人でもあったし、
実際、『SUPERUNKNOWN』には突然変異としか思えない曲が幾つかあるしで、
もしかしたら本作で聴けた音楽こそが、彼らの結成以来の到達点であったのかも。
あ。関係ないですが、このアルバムが出た当時、
日本にも似たような音楽を出している新人バンドがいました。
その名は、人間椅子。そしてイギリスには、カテドラルがいました。
当時は、いまのようにインターネットは発達していなかったわけで、
お互いに知る由もなかったとは思いますが、偶然とは面白いものです。
こうした泥臭いヘヴィ・ロックのファンは、聴き比べてみるのも一興かもしれません。