ここ数年SFJCやElastiを中心に活動を続けてきたJoshua Redmanが、2年ぶりにWarner傘下のNonesuchからアルバムを出しました。アコースティックでストレート・アヘッドなジャズアルバムを出すのは「Passage of Time」('01)以来実に6年ぶりとのことです。
自身西海岸(Berkeley,CA)で育ち、近年は東ではなく西を活動拠点としていたJoshuaですから、アルバムタイトル「Back East」には、彼のさまざまな思いが込められています。
1つには、Joshua自身がもっとも大きい影響を認める、当時東海岸を拠点として活動していたS.Rollinsが西海岸はL.A.にやってきてDr、Bのトリオで録音した先駆的名盤「Way Out West」(Contemporary,57)にちなんでいることが挙げられます。
もう1つには、若き日のJoshuaがボストンやNYCで積んだ音楽的研鑽は彼自身に大きな影響を与えたのですが、SFJCやElasticなどで多忙な毎日を過ごしている中、彼にとって本当に大切なそうした経験に立ち返る、という意味を持っています。音楽家としての本能に衝き動かされたとも言えるでしょう。
さらに、本作吹き込み後数ヶ月にして、昨年9月に惜しくも他界した父親への思いも込められております。75歳になる父・デューイは本作で2曲(10・11)に参加しております。
1曲目「The Surrey with the fringe on top」はR.Rogersの筆によるスタンダードですが、この曲もおそらくSonny Rollinsを意識しての選曲でしょう(「Newk's Time」('58))。5曲目「I'm an old Cowhand」やテーマメロディが特徴的な6曲目「Wagon Wheels」も「Way out West」収録曲です。これらRollinsの曲を契機として、Coltrane(10曲目)・Getz(2)・Shorter(4)らTenor Titanの曲(orゆかりの曲)をも取り上げています。
本作でJoshuaが言う「East」とは、「西ではない」地域を指し、中西部やインドネシア、インド、アフリカも含みます。幼い頃に母に連れられて行ったBerkeleyのCenter for World Musicやベイエリアではそうした「East」のダンスや音楽が溢れており、それらが、Joshuaが作曲するにあたり、様々なレベルで影響を及ぼしています。本作でのJoshuaの曲「Zarafah」(3曲目)、「Mantra #5」(8)、「Indonesia」(9)あたりは、まさにそうした「East」の香りを色濃く感じさせる佳曲揃いです。
11曲目「GJ」は、Joshuaがエスプレッソを一杯飲みに出ている間に、普段のテナーではなくアルトで(しかも一発録りで)Deweyが吹き込んだもので、「Gift for Joshua's infant Son」の意味ですが、曲の由来とともに、深遠なその表現には感動を禁じえません。
タイトル曲「Back East」はJoshuaの様々な思いを伝えるものでしょうか、アップテンポで熱い演奏が繰り広げられております。
今回、彼は3つの、それぞれ一流のリズムセクションで録音しております。全般をとおして高度な演奏が続きます。作品のバックグラウンドとあわせて、ぜひじっくり聴いてみてください。1stリーダーアルバムで録音したDr、Bのトリオ演奏と聴き比べてみても面白いでしょう。