原作は遠い昔に一度読んだことがあるだけで
すっかり忘れてしまいましたが、
現代風にアレンジしたり奇をてらったりすることなく、
「文学」を真正面から映像化した誠実な作品だと思いました。
極端な光の白さと色調の乏しい映像から、
この時代(明治)の灯りの乏しさと
兄弟の暮らしの貧しさが伝わってきます。
特に胸をうたれたのは、夜、真っ黒な高瀬川を
滑るように下っていく小さな船の上で、
罪人(成宮寛貴)が同心(杉本哲太)に
静かに真相を語るシーン。
闇の中、月あかりに照らされた罪人の顔はおだやかで、
提灯(行灯?)に浮かぶ同心の顔は訝しげに凝っている。
二人の表情といい語り口といい、
バックに流れる切ない音楽といい、
なんともいえず絶妙で見事です。
台詞は原作のままなのかどうかわかりませんが、
やはり「文学」を意識していると思われ、やや朗読っぽい。
それがまたいいのです。
映像なのに、本を読んでいるような、
不思議な感覚にとらわれました。
作品が描き出すテーマは重く、
現代においても簡単に答えの出ない問いを含んでいますが、
さすがというべきか、まったく押しつけがましくありません。
たった30分という短さですが、
つまらない映画を2時間見るより、よほど見応えがありました。