事実誤認をしている人がいるようなので書きますが、このアルバムはもともと「高橋悠治の伴奏で歌いたい曲を好き勝手に歌う」ことを目的に、自主制作盤として通信販売で発売したものです。ライブVTRも通販のみの発売でしたが、いずれも音楽的な評価が極めて高かったので、通常ルートでもCD/DVDとして発売されました。
音楽的な評価の中心は、高橋悠治の演奏になります。矢野顕子と高橋悠治は「愛がなくちゃね」の"Good Night"などで単発の共演がありましたが、このアルバムはかなりの部分を二人の演奏が占めており、高橋悠治ファンにとってもマスト・アイテムといってよいと思います。惜しむべきは、フランス語の歌詞を英語で歌っていることです。中途半端なフランス語で歌うよりは英語の方がよいという判断だと思いますが、原曲を知っていると違和感があります。
あと、このアルバムの録音においては、矢野さんはかなり自分に厳しかったようで、非常に丁寧に歌っています(それまでのアルバムはボーカルはテイク1か2くらいだったとのこと)。ちなみにこのアルバムの次に録音されたのがあの名作「峠のわが家」です。シンプルなサウンドで自らの歌唱法を見直したことが、その後の飛躍に結びついたと思います。