鹿児島県を拠点とする男性四人組ピアノエモバンド、FAT PROP。
メジャー2ndアルバムである今作で新たな可能性を開花させた。
ギターが重い音を鳴らす、ハードロックな「Drive」、
シングルカット出来そうなほどキャッチーでドラマチックな「Stop The Time」。
Rindaの陽性のソフトなハイトーンボイスと、澄んだピアノの音を引き立てる構成になっており、
優しいだけでないRindaのシャウトもエモーショナル。
ピアノと丁寧に重ねたコーラスが効果的に響く「Shade」、
キーボードがうねるダンス、「CAN`T STOP THE MUSIC」。声とバンドのグルーヴでライヴでアガること必須の曲。
MIKAを彷彿とさせる、Rindaの遊び心溢れるファルセットと鍵盤の「Feelin`Pop」、
序盤はRindaがピアノ一本で丁寧に歌いあげ、バンドの演奏が加わり、メロウなギターを聴かせる「Brand New Morning」。
表情豊かな声と柔らかなピアノとギターで徐々に高揚していく「I Don`t Care About You」、
Rindaが聴き手にしゃべりかけるようなラップを聞かせ、ジャズなピアノとギターの絡みがたまらない「Well, Well, Well」。
ファルセットを巧みに使い、最後にソウルフルなシャウトも聞かせる。
うって変わって出だしからタイトで挑戦的な「Reach」、
コーラスワークがクイーンのようで、Rindaの声もヒネリがきいていて
60年代ロックなギターソロも飛び出すダンスをうながすその名も「Hi」。
コーラスとエモをうまくミックスさせた「Dream Continue」、
ビートルズを彷彿とさせる「Hello」、メロウなギターとピアノ、日本語詞でメッセージを伝えるこの曲で幕を閉じる。
FAT PROPを聞いたのはこのアルバムが初めてなのだが、後日1stアルバムである
「THE DIE IS CAST」も購入して聞いた。
そちらはRindaの陽性のハイトーンボイスと、パンクバンド然としたサウンドで
ELLEGARDENを彷彿とさせるバンドといった印象だった。
1stから2ndまでの期間はちょうど一年、この間「どうすればもっといい音楽が出来るか」ということを
かなり意識して曲を作ったのではないかと思う。
Rindaの歌声は、バンドでありながらアカペラやピアノ一本といった最小限の音で
聴き手の耳を捕えることができる稀有な声質で、シンガーソングライター的な声である。
今作は、バンドのエゴを出すよりもRindaの歌声と鍵盤を引き立てる構成になっており、
初作では比較的エッセンス的な使われ方だったRindaのファルセットや鍵盤、60年代ロックを積極的に盛り込み、
ソウル、ファンク、ジャズの要素も取り入れた。
ギターを掻き鳴らす曲や、パンクバンド然とした性急なビートの曲が姿を消し、
「バンドであること」、「パンクであること」にこだわらなくなったように見える。
ソフトでポップな音楽は数あれど飽きずに聞かせるというのは難しく、
このバンドのアタックの強い演奏や構成力は今までの経験あってのものであり、
エモやパンクで培ったこともちゃんと還元されている。
歌を立たせる時は演奏をなくしたり最小限にしたり、前作よりもメリハリがついた。
「なぜここでこういう音を出すか」ということに理由がある作り。
Rindaの歌声もコーラスも遊び心があり、声のみでアゲるということも意識した。
知性と温かみが両立したサウンド。
今作を聞いて思い浮かべたのはMIKA、JAMIE LIDELL、THE FEELING(いずれもUK)。
FAT PROPは、このアルバムでパンクバンドやエモから、普遍的ないい楽曲を奏でるバンドに変貌した。
今まではピアノエモというくくりだったが、今作でそのくくりも狭いものになるだろう。