最貧困層をマーケットと捉えるBOPは、21世紀になって、多国籍企業のCSRの一環として、米国などから提言されてきたが、必ずしも大きな流れにはならなかったといえる。しかし、リーマンショック以降、欧米先進国の需要減退への処方箋として、急速に注目を浴びてきた。そして、まさしく、新興諸国の富裕層をはじめとする市場開拓が、先を争って進められてきた。しかし、そこには、新興諸国を破壊しかねない危険もはらんでいることは確かである。タイバーツの暴落、韓国のIMF危機などの記憶も新しい。この本では、BOPはたしかに輸入概念であるけれども、それは日本企業だからこそ、正しく推進できるマーケットなのだという稀有な主張で、類書にないユニークな特徴を持っている。ヤクルト、フマキラー、住友化学などの日本企業の取り組みを丁寧に、わかりやすく紹介するなかで、日本企業だからこそできる海外展開の経営活動の典型として提言している点が、なにより、現在の、閉塞感あふれる日本の経営学に、新たな光明を指し示すものである。