今回は副題が示すとおり黒蛇カーサが物語のキーポイント。ミミコを九龍の血統に転化させるためにカーサがシンガポールを訪れる。と言う展開から、カーサの襲撃を回避しようとカンパニーサイドが奔走することで物語が進行し、それと同時に旧知の人物を前にしたことでカーサの本質的な部分、弱者の一面が垣間見れます。これが九龍の血統の本質の暗示になっているのと同時に、そこから次巻の過去語り「聖戦前夜」に繋がる展開になる話の持って行き方が、読み手のボルテージを徐々に上げてくれるナイスな演出になっています。また、ハイライトシーンにおける映像や雰囲気をイメージさせる力が抜きん出ている本作の中でも、この巻の後半の魔術戦は特に迫力と緊張感が圧倒的です。この巻の魔術戦と、7巻のジロー対ダールの剣戟は是非読んでもらいたい1シーンです。
カーサにスポットが当てられている点以外でも、いつもどおり物語に停滞感は無く、登場人物に容赦のない思い切りの良い展開で飽きさせません。いくら文章主体の小説だからと言って、主要人物の外見をこうもガラリと変えてしまう作品はなかなか無いのではないでしょうか。