ホーボーキングバンドとしての力量を輝かしく掲げた今作は、佐野がハートランド時代の曲は演らないかもしれないとこぼした当時の、このバンドでロックする気合が結果に結びつき、楽器それぞれの調和も奥行き深く、非常に充実した音になっていた(6「風の手のひらの上」は名曲)。
このバンドは凄い。またそれを引き出すサイモン氏のタクトも。6人というビッグバンドとしてのガチャガチャ感がひとつにまとまったときの大きなグルーヴ、そして細かなディティールに潜むミュージシャンそれぞれの泣きの見せ所など、一回聴いたら二回三回とひきこまれてしまう奥深さが在る。この一流の最強メンバーだからこそ成し得る、ロックの原点回帰(ディランやニール・ヤングを経由した先)の美しさをみた。9「誰も気にしちゃいない」の歌、音の鳴り方等、ウッドストックのその館に染み込んでいる熱が、佐野の魂に触れ、ホーボーキングの音に揺れ、寄り集まってきたような神聖さを覚える。
また、テクニックだけでなく、バンドが音を出すときの喜びが全体を大きく貫き、それを大人のインテリジェンスさ(4「マナサス」は絶品)が包み込むので、バンドのハートがしっかり伝わる一枚だ。更に音は“納屋”というロックバンドが初めて音を鳴らす場所のようなピュアな環境が敷かれている。だからだろうか、音の中に木の温もり、つまりは音の跳ね返りが柔らかで、空気や身体にすっと溶け込んでゆくナチュラルさも感じえた。
他の作品や他のロックアーティストにないウッドストックで演った者だけの不思議な空気・マジックが今作の魅力。趣旨も技術も環境も全てがこだわりぬかれた先の、アーティスティックな一枚にしか鳴らない音が在る。