非常に誠実に作られた映画。俯瞰を多用した合戦シーンなど実に見事なものだ。
だが、最後、又兵衛の死で泣けなかった。
何が足りないのか考えたくなり、オリジナルのアニメを観てみた。今度は泣けた。
差は、主役2人の造型にある。
役者の力不足ではない。2人ともよくやっていると思う。
(個性という点でも、草ナギ氏は、多少線は細いが、野卑でなく無骨な俳優が払底気味の中、不器用そうな感じがはまっていないこともないし、新垣嬢は娘らしく、姫らしい。)
原因は、意外なことに、『三丁目の夕日』を手がけた泣かせの達人の脚本・演出にある。
又兵衛の抑制が足りない。小出しに「自由」などと自己主張させていては、最期の抑えた思いの内圧が高まらず、ただ爽やかに流れてしまう。
廉姫の激しさが足りない。たとえば、櫓に向かう場面、塀を越え、斜面を駆け下りるアニメの描写をそのまま再現せずとも、ほとばしる思いの表現のしようはあるはず。そこを通り一遍にしておいて遺体に取りすがらせても、痛みは伝わらない。(アニメの廉姫は離れた櫓で声も無く泣き崩れるだけだ。)
リメイクする作り手は当然オリジナルを観ている。その下地があるので、つい伏線がほんの少し疎かになる。
自分が分かっていることを、落ちなく人に伝えるのは難しい。