この作品の凄いところは単なるラブコメものに終わらないところ。物語には「ゴールド」とか「イタリアもの」とかバブル後半のトレンドが盛り込まれてはいますが、女心の掴み方みたいなものは時代が変わっても変わらないもの。女心は秋の空と言いますが、その移ろいやすい心とソレを掴むセオリーが満載です。さらに、単なるラブコメだけに終わらないところが素晴らしい。自分も周囲も欺いてモテ男を演じている主人公(童貞カメおたく)の若さ故の葛藤や人間としての苦悩が生々しいのです。現在連載している『絶薬』では環境や教育などに対して問題提起している作者ですが、その熱さ故に「山田玲司作品は説教臭い」と思っている人も多いはず。しかし、この作品はエンタメと哲学的思想がうまいバランスで盛り込まれています。作者本人は「魂を売った」作品と位置づけているようですが、さすが代表作と言われるだけのことはあります。恋愛マニュアルとして読むも良し、主人公の「男としての苦悩」に共感するもよし、人間の愚かさを哀れむもよし。名作です。