版元ESRIの限りなく独占に近い寡占状態にある地理情報システム。
主力商品であるArcGISは、つい最近までバージョン9.Xが主流であった。
一昨年、これが大幅に仕様変更。確かに操作性は格段に良くなった。
もう、フォトショップやワードと比べても遜色ないくらいである。
DBFしか読めなかった属性テーブルが、エクセル(〜2003)まで読めるように
なった改良点には、思わず快哉を叫んだ人も多いのではないだろうか。
しかし、斯界の戦艦、マ●クロソフトと同じく、消費者に選択肢のない状況で、
突如大幅に仕様が変わってしまうと、困るのは旧バージョンのユーザーである。
アイコンやボタンの位置変更、機能の統廃合、見慣れない新機能などなど。
横文字のチュートリアルしかない状況で、あれこれ試行錯誤した末に
「フリーズ→絶叫→再起動」のコンボを味わった人も多いのではないだろうか。
今年に入り、ようやく日本語でも読めるVer.10対応の優れた解説書が出てきた。
北大の橋本教授のお書きになった「GISと地理空間情報」はその好個の例である。
しかし、多少心得のあるユーザーにとって同書はややエレメンタルすぎることと、
講義が念頭に置かれているためか、各章がテーマに沿ってシークエンシャルに
書かれており、それに当てはまらない実用者の個別具体的な問題解決には
不向きという難点があった。
そんな不満を解消するのは、やはり作った張本人であるESRIである。
操作中に直面した問題を解消したいとき、その問題が何に関する問題なのかに
基づいて、GISの機能のなかから関連する項目を検索できる「逆引き検索」の
使い勝手の良さと、橋本本より遙かに厚手で、その分詳しく操作手順が記されて
いるのが非常に嬉しい。実際のソフトに付されたヘルプを和訳して細かい
操作手順を(画像付きで)書き添えただけ、という穿った見方もできようが、
やはり日本語で辞書のように引くことのできる操作ガイドの存在は便利この上ない。
取り敢えずGISが何かくらいは分かっているユーザーなら、現段階(2012年4月)で、
和文で読めるテキストとして、最もお薦め度が高いのは間違いなくこれである。
GISが何かを知ってから・・とお考えの初学者は、上記橋本書と、この本を二冊
購入すれば、ほとんど事足りると思う。それくらい、GISの敷居は低くなった。
すばらしいことだ。