ブラジルの至宝、ANGRAの7thアルバム。イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの最後の作品"テンペスト"をモチーフにしたコンセプト・アルバムです。私は既にシェイクスピアのテンペストを読んでいただけに、この作品がいかに緻密に作り込まれているかがよくわかった。幻想的な嵐のインストの#1.Viderunt Te Aquae 〜#2.Arising Thunderなどは、大公でありながら魔法に明け暮れ孤島に追放された魔術師プロスペローが空気の妖精エアリエルに命じて嵐を起こさせ自分を追放した一行の船を復讐の為に島に呼び寄せる場面なのかな、とか想像しながら聴くと曲が物語の場面を上手く描写している事がわかる。演奏面ではアキレス(Dr)の脱退、Vo.エドゥの喉の不調等あるが、こういったミドルテンポのプログレ路線でいくならアキレスでなくても十分だし、エドゥの中、低音の歌唱もまた魅力がある。キラーチューンが無いという意見もあるが、たしかに過去の名盤のようなインパクトのある曲はない。しかし、このアルバムは全体で一つの作品"テンペスト"を表現している。まあそれはどのコンセプト・アルバムにも共通ではあるが、このアルバムにはコンセプト・アルバムにありがちなダラダラとした聴き疲れを感じない。全体的にゆったりとスローな時間が流れているのに不思議とさらっと全曲通して聴けてしまう。心に響く曲がないからと言われるかもしれないが、それならば途中で飽きて止めてしまうだろう。しかし最後まで聴き通せてしまうのはやはり緻密に練られたメロディ、熟練した演奏によるものだからではないだろうか。心に響くというよりは心にスーっと染みていく、まさに"AQUA"のような、聴いていて心地よい、そんな作品だ。