ジャズ・ヴァイオリニストの巨匠ステファン・グラッペリと、チェロの世界では第1人者と目されるヨー・ヨー・マの出会いを1枚のアルバムにしているわけですから、悪くはないのですが・・・・・。
ヨー・ヨー・マのダイナミックな躍動感があまり感じられないのは事実です。ステファン・グラッペリのメンバーで固めていますので、グラッペリは、いつもの調子でスウィングとはこう弾くものだぜ、とばかりに伸びやかに演奏しているのですが、相方は、同じパリ生まれの巨匠に敬意を表しているのかは分かりませんが、掌の上でこじんまりとまとまっているように聞こえます。
1989年録音当時、1955年生まれのヨー・ヨー・マは34歳、一方1908年生まれのグラッペリは81歳、約半世紀の年の差と音楽歴を越えた演奏ですので、そのような歴史的なセッションという意味合いは十分にあるのですが。
7曲取り上げられたコール・ポーターは、ミュージカルの作曲家としてつとめて有名な人で、本作でも「エニシング・ゴウズ」「ソー・イン・ラヴ」などは皆が知っているお馴染みの曲です。比較的オーソドックスな演奏だったこともあり、この二人でなくても、という感覚は最後まで拭い去れませんでした。不満な原因は、ピアノを演奏しているロジャー・ケラウェイのアレンジのせいかもしれませんが。
音色だけで言えば、グラッペリも艶やかな音を奏でますし、ヨー・ヨー・マも軽やかで優雅な音で応えています。ジャズというよりも魅力的な二人の演奏に出会えたということで良しとせねばならないのかもしれません。