5つ星のうち 3.0
雨の週末に, 2011/10/6
レビュー対象商品: Angelology (ハードカバー)
NYにある修道院。幼い頃から修道院に入り規律正しく生きてきた若く美しい修道女エヴァンジェリンは、ある日一通の手紙を受け取る。手紙は、他界した修道院長と故ロックフェラー夫人との関係についての問い合わせであった。この奇妙な取り合わせに興味をもち調べ始めるが、彼女の静かな修道院での人生は一変してしまう。実は、彼女の祖母も亡くなった母も、神学の一分野である天使学−かつて中世においては重要な学問であったが、現代ではほんの一握りにまで減ってしまった−世界では知られた学者であった。すぐれた学者であった母は研究のさなかに惨殺されたのだった。彼女は事の真相をはっきりと知らないまま両親に死に別れ、一人で生きてきた。そして今、母の死、祖母と、自分の出生の秘密が、全てが明らかになっていく。
驚くことに、堕天使と人間の女性たちは交わり、生まれた混血児達=ネフィリムの子供達は、父親達である天使から身体的美しさを受け継ぎ、また、圧倒的な力と数百年というはるかに長い寿命を、そして武器と戦闘力をもっていた。彼らは世界の富と権力を手にし、力でははるかに劣る人間達を支配してきた。しかし、長い時を経て彼らの力も次第に弱まり、その象徴である羽の異常や、病気で死ぬものも現れ始める。エバンジェリンの母は、ネフィリム達の問題を研究していた。彼らを癒すものはただひとつ、大天使ガブリエルが与えたといわれる、竪琴がかなでる天上の音楽のみ。この竪琴は堕天使の元におかれ、この竪琴を探して、ネフィリム達と人間達の争いが続いてきた。
一千年以上前に、天使学者達のグループは、堕天使達がが幽閉された場所を調べ上げて探検し、一度はその竪琴を手にするが、今所在はわからない。そして時は流れ、20世紀となり、ヒトラー・ナチスドイツによる侵攻が行われようとしていた最中に、パリにいる学者達によって二度目の探検が計画される。エバンジェリンの祖母はそのグループの重要な構成員であり、ロックフェラー夫人は学者達のパトロンであった…。
旧約聖書や外典中の天使、特に堕天使に関わる記述をもとに、たっぷりと想像を膨らませて書かれたファンタジー・スリラー。暇な雨の週末にでも読むといいですね。ヨーロッパ人種の祖先は実は…とか、人類の歴史における支配階級はネフィリムだったとか、荒唐無稽なんてものじゃないですが、そこはあくまでフィクション。さまざまな人間とネフィリム達が複雑に絡み合い、ストーリーを展開していきます。コストバの"Historian"を思い出します。4部から構成されており、2部−上記のパリの学者達による探検までの話−が、半分以上を占めます。そこから、人間とネフィリムの戦いは現代のNYへと舞台を移し、一気にスピードが加速、4部で衝撃のラストを迎えます。ヴァンパイアや魔女、ネフィリムなど異形の者達のお話は流行りだし、荒唐無稽だけど話は面白いし、楽しめました。アニメにしたら面白そう。
ちょっと膨らませすぎ・手を広げすぎで、突っ込みどころは満載。読み終えて、最初から抱いていた違和感−何故宗教人でもない人間達が、命をかけてまでネフィリムと戦い竪琴を追い求めるのか、伝わってきませんでした。コレを読んで、Angelologyという学問に身を投じようとは思わないですw。中世のカトリック僧たちの場合は信仰によるものでしょうが、現代の学者達は明らかに教会とは距離をおく学者達であり、ネフィリム達に関わらなくても問題なく生きていけるだろうし、竪琴が人類にとって脅威であるのかもわからないのに、命をかけてまで探求しようとする理由が私にはわからず、説得力にかけると感じるため星3つ。使われる沢山の小道具も、パズルの中で重要な鍵や暗示となる存在になりえず背景になってしまってるあたりも残念(例えばクロイスターのユニコーンとか)。また、全般的に非常に説明的ですが、説明に終わってしまうことがままありました。また、登場人物の感情の表現が淡白というか稚拙というか、言葉の合間に垣間見える人と人との関係や、心の動きを、巧みにあらわすことができればもっと奥行きが生まれるのではないかと思いました。特にラスト。普通の人間なら心が壊れてしまうほどの衝撃であるだろうに、淡々としてて拍子抜け。エバンジェリンの心の中を、苦しみをもっと描いてほしかった。このあたり、非常に説得力があるGeraldine BrooksのPeople of the Bookと違う点です。最後に、宗教学や、クリスチャンで神学の素養がある方は問題ないでしょうが、まったく教義を知らないと理解し難いと思う部分があるかもしれません。めんどくさくても調べるほうがより楽しめると思います。