短距離走者のように若さに任せて突っ走った”In The City”から3作目、落ち着いた雰囲気のジャケットとタイトルから何か新しいことを予感させてくれたのだが、内容もその通りというのが第一印象だった。”In The City”を愛聴していたので、正直なところこの変化に対して初めはがっかりした覚えがある。彼らにしても、いつまでも活きのいいビートだけで満足できるはずはなかったのだ。今だからわかることだが、ウェラーにその気持ちが強かったようで、作詞作曲だけでなく編曲にも益々主導権を大きくして、ビートの聴いた曲が基本ながらピアノ4、効果音512、逆回転6など新しくはないが彼らなりの挑戦を試みている。今現在の彼にも通じるアコギをフューチャーした5、2部構成といえる清清しい9などは試行錯誤の代表的な例と言えるだろう。
しかし、どんでん返しが待っていた。最後の最後、”Down In The Tube Station At Midnight”の演奏とこれまでにない強い気持ちを込めたボーカルの迫力に圧倒されてしまった。歌っている内容を知ってさらに衝撃は増した。放送禁止になった理由など当時移民などほとんどいなかった日本では実感できなかったことだが、この曲には英国の社会事情を反映するある日の出来事がThe Jamを通して畳み込むように歌われている。誰にも愛する人がいることをも同時に歌いながら。どちらが主題にしろThe Jamがここまで真剣にこんな題材を歌うとは信じられなかったが、この曲を何度も聴きながらいつしか本作はThe Jam 2枚目の愛聴盤になっていた。