邦題「アリスの恋」。1975年、国内がパニック映画ブームで騒然となる中、アメリカン・ニューシネマの流れを組む(と当時は見られていた)ロード・ムービーの一群が海外からの高評価が伝えられ注目されていた。「ハリーとトント」「ブルー・ジーンズ・ジャーニー」そしてこの映画である。ところが実際フタを空けてみると、少なくともこの作品には従来のニューシネマとは違う種類の驚きがあった。冒頭の主人公の少女時代のエピソードでの異様に人工的に彩られた演出に始まり、むしろ全編、古典的・ハリウッド的というべきロマン主義の再生の萌芽が満ち満ちていたからだ。夫に先立たれ突然子連れの耐乏生活を余儀なくされた主人公(エレン・バースティンがアカデミー主演女優賞受賞)が、少女時代に夢見た歌手への道を目指しつつも漸く、田舎町のレストランのウェイトレスの仕事を得て、心優しき農場主(寡黙なクリス・クリストファーソンが好演)と結ばれるまでが、かなり起伏に富んだエピソードを交えながら描かれる。スコセッシ(当時はスコシージと表記されていた)はこの作品が日本では初登場(「明日に処刑を…」も「ミーン・ストリート」も日本では「タクシー・ドライバー」より公開は後だった)。その後、米国雑誌の特集でデ・パルマ、スピルバーグ、ロバート・タウンらと共にハリウッド第九世代と命名されるようになる。