聴いてるこちらが困惑してしまうような、冒涜してしまっているかのようなイノセンス。胸を締め付ける、やるせないほどの物哀しさ。“Lust For Life”のPVでは、ゲイカップルや女の子が忙しく登場しては、歌ったり踊ったり裸になったりして笑顔を振りまいている。ガス・ヴァン・サントやラリー・クラークの映画のような、出口の見えない退廃と青春がそこにはあるような気がした。
一体どんな17歳が習作のようなコード進行でギターを弾き、決して美しくないその声で歌っているんだろうか、と思いを巡らせたら、全然違った。30の男が、こんな崩れ落ちそうな歌を歌っている。
サンフランシスコで活動する「男性デュオ」Girlsのデビュー作は、“Lust For Life”のような純正ギター・ポップが続くかと思いきや、意外にも豊かな音楽的バックグランドを開陳している。“Laura”の陽気なヴァイブに胸を焦がし、長い夜にギター・ノイズのオーロラが降り注ぐ超名曲“Hellhole Ratrace”でピークを迎え、初期マイブラ直系のシューゲイズ・ソング“Morning Light”が、たわみがちなアルバムのムードを締める。
Girlsも大きな意味では新世代のUSインディ・バンドと共振する部分があるんだろうけど、彼らの音楽はアカデミックな研鑽を重ねた産物ではないし、浮世離れしたフリー・フォークでも才気走ったサイケでもない。
彼らはインテリジェンスで音を武装していない。過剰な自意識と感性が、スタイルや批評性より優先された、最近ではとても珍しくなってしまった類の新人だと思う。だからシンプルでペナペナな曲が並ぶのに、このアルバムが放つ「儚さ」には誰もたどり着けない。そんなありあまるナイーヴさを持った、彼らにも二度と作れないであろう一枚。