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1980年代後半にデビュー、個性的なアイドルとして一世を風靡した本田美奈子(1967年、東京・葛飾柴又生まれ)は、もともと挑戦者精神の旺盛なタイプだった。1990年代はミュージカルの舞台で高い評価を得ており、近年はセルフ・プロデュースでも才能を開花させている。その彼女が、ついにクラシックに挑戦したのが本作である。日本語の歌詞を岩谷時子が7曲担当し、クラシックのさまざまな名旋律に歌をのせるという試みを行っている。
日本語の歌詞をのせるということの最大の効果は、歌を自分のものにできるという点にある。これらの名曲たちを、遠いヨーロッパの伝統的な音楽だなどと考えるべきではない。現代に生きる一人の日本人女性が感じていることを、等身大に自由に、歌に込めているところを聴くべきだ。
特におもしろく聴けたのは、箏とフルートとキーボードの伴奏による、フォーレの「シシリエンヌ」。15歳の恋の記憶への、大人の女性の複雑な思いが、フォーレの旋律にはよく似合う。マスネの「タイスの瞑想曲」には本田美奈子自身が平和へのメッセージを込めた自作の詩をつけている。原意を離れて、彼女がこのメロディにそういうインスピレーションを持ったということは興味深い。
アイドル時代の本田美奈子を懐かしく思い出すファンにも、うれしい驚き以上のものを与えてくれる1枚になるだろう。(林田直樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
抜群の歌唱力でポップスやミュージカルに大活躍してきた本田美奈子が、ついにクラシックに挑戦。クラシックの唱法も取り入れた彼女が、まったく新しい歌の世界を切り拓いている。
内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
J・クラシックの勢いにくらべて、クラシカル・クロスオーヴァーだけはどうも……フィリッパ・ジョルダーノやサラ・ブライトマンの活躍が目立つ一方で、なかなかそれらとならべて聴けるものがなかったからだが、やっと可能性が出てきた。満を持してという感じで、新作を聴かせてくれたのは本田美奈子。ポップ・アイドルとしてのデビュー期、その後のミュージカル・シンガー期、それぞれに多くのファンを魅了してきたその声が、まったく新しい装いをまとう。スゴイのはこの試みが決して簡単な思いつきや雰囲気から出てきたモノではないこと。たしかに彼女はアイドル時代から、どんなときも歌と真剣に向き合い、その時々にベストをつくすタイプだったが、このアルバムから伝わってくるのもその感覚だ。収録ナンバーごとに細かくニュアンスをあやつりながら、原語と日本語訳詞の歌詞をていねいに歌い上げている。その鍛えられた発声法と美しく自然な高音はきっと新たなファンを獲得することだろう。 (佐藤篁之) --- 2003年06月号