ノベルゲームのライターとして注目を集め、小説デビュー作「人類は衰退しました」も評価の高い田中ロミオの1巻完結の新作。
本作は真正面から「妄想戦士」について書かれた物語です。「妄想戦士」とは作中で主人公がつける名称で、自らの妄想設定に没入して架空のキャラクターなりきってしまう、多くは思春期の少年少女にみられる現象を指します(主にネット内では「邪気眼」というジャーゴンでもよばれます)。
序盤に普通の学園ファンタジーと錯覚させるプロットのひねくれ方、重度の「妄想戦士」であるヒロインの奇怪な言動に振り回される主人公というねじれたラブコメ演出、ヒロイン含む「妄想戦士」が垂れ流すMy設定の痛々しさなどモチーフの奇抜さを十分に活かしてコメディ的なストーリーが進みます。
同時に「学校」という場所のある種の残酷さを独特のリアリティで描きだし、主人公は学校内カーストについて饒舌に語り、教室内の異物であるヒロインに排除の圧力がかかる様子に心を痛め、世界に適応しようとしないヒロインにいらだちをぶつけます。
物語のラストで主人公がヒロインを「こっちの世界」に残るよう説得するためにとった手段に、私は自分でもちょっと驚くくらいに心を動かされてしまいました。客観的にみれば無様で、愚かで、気持ちの悪い行動をとりながら、教条的なほどにストレートに自分の気持ちを訴える主人公。アンリアルな道具立てを用いるからこそ「奇跡」を美しく描き出す手際はお見事です。