写真家が被写体との関係で逃れられない倫理に関して本書の企画が孕んでいる問題については、chi氏のレビューがご指摘の通りである。
僕が本書で最も印象深かったのは、相手が人間以外の生物であろうが無生物(建築とか)であろうが、被写体の生命力やエロスを写しだすことをアイデンティティとするこの作家が、被災地の殺伐とした破壊の痕跡を前に自らの「場違い感」に似た無力さを写し込んでいる点である。
作家の感じた無力感はあとがきに少しだけ書かれてるが、「圧倒的な破壊や死を前にした時、芸術に何ができるのか」という永遠の問題に対峙してしまった、一級の商業写真家による「敗北の記録」として本書を受け取れば、まあそれで良いではないかという気もするんだよな。甘いですかね。