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5つ星のうち 4.0
理屈に興味が無い読者も楽しませる筆力,
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レビュー対象商品: ABC<阿部和重初期作品集> (講談社文庫) (文庫)
私は、小説を1冊も読まない時期が10年以上あったぐらいで、小説読みではなく、まして小説についての小説など読みたいとは思わない。
そのせいか、「トライアングルズ」「無情の世界」からは、書き手と読み手の距離の技術的な実験以外の意図を感じ取ることができず、楽しめなかった。 そんな私でも「ABC戦争」「ヴェロニカ・ハートの幻影」「みなごろし」の突き抜ける感じは大いに楽しめた。(「公爵夫人の午後のパーティー」は、あまり新味が無い構成に力点が置かれている分、「突き抜け感」がやや削がれている気がする。) 理屈に興味が無い読者も楽しませる筆力があり、読み物としてお勧めできる。
5つ星のうち 4.0
メタフィクション中のメタフィクション:ABC戦争,
レビュー対象商品: ABC<阿部和重初期作品集> (講談社文庫) (文庫)
ここ最近で阿部和重氏の『ピストルズ』と『シンセミア』は間違いなく世界レベルの純文学に驚かされた。圧倒的完成度の高さと圧倒的面白さ。恐らく阿部氏の実力は現時点で日本では最高の作家だろう。その氏の初期作。デビュー作『アメリカの夜』が『読まずに語る文芸批評』by田中康夫氏に「ただの人」とこき下ろされ同作を読んだ僕も同じ感想を持ったものだ・・・。
その阿部氏による初期作品の中で『ABC戦争』タイトル通りなのだがメタフィクションとして、まず巧い。しっかりした設計と緻密な文章にて抜群の作品に仕上がっている。徹底した自己言及による言葉を積み重ねて用意周到に計算され尽くした作品だ。しかし、徹底したメタフィクションとして完成度は非常に高いのだが、何も表現されていない。最も突き詰めて考えるとメタフクションを貫き通すとそこには虚構の証明があるだけになるのかもしれないので、こんなレビューは無意味なのかもしれない。だが、メタフィクションという表現形式だからこそリアリズムやメタファーでは語りえぬことをあぶり出す可能性があると思う。上述の傑作二本は実験性という面は薄れてしまった。それを成熟とみなすべきか戦略的後退とみなすべきかは様々な意見があるだろう。だが、阿部氏が『ABC戦争』で見せた実力と現時点での、王道的手法の実力を合致させれば過去の大作家や現在も活躍している純文学作家をぶっちぎるような大作家になる可能性があると思う。そんな理由で氏の次回長編が楽しみでしかたがない。
2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
今なお傑作,
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レビュー対象商品: ABC<阿部和重初期作品集> (講談社文庫) (文庫)
最初の単行本から10年を過ぎ、新潮文庫版からも5年も経っているんですね。しかも、それでもなお新鮮な傑作であることは間違いない初期作品集。新潮文庫版よりもさらに内容が増えていてオトクでもあります。
冒頭の「ABC戦争」でまず腰が抜けます。成人式に田舎に帰った主人公が高校時代の「戦争」を調べ始めるという話。通学電車での不良高校生のいざこざから近隣高校生を震え上がらせる全面対立へと進展したのはなぜなのか。その「物語」の中心だけでもおもしろいのに、導入部分は「文学」の可能性についての長い長い注釈です。現代思想を要約するその力技が「物語」そのものにも浸透していって、何が起こったのかあいまいなまま、心地よい「語り」が進行しています。この「持続」と「強度」。すげーぞ、阿部さん。 いたずらに難解なだけでないのが特にすごい。誰もがアノ頃を懐かしく思いだすはず。特に堀ちえみの「ジャンプ!ジャンプ!」にピンと来る世代は読むべし。
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