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例を挙げよう。横浜のオウム本拠地に抗議行動を仕掛ける右翼。近づいてみると何やらそのスタンスに「思慮深さ」を感じる。森監督が聞いてみると、何とその右翼は森監督による週刊誌の記事(オウム信者と地域住民の共生関係に関しての)を読み、オウムサイドの真意を尋ねる必要があると言う。
マスメディアに取り上げられることの稀な光景。しかし、私たち「市民」の鏡像がフィルムには余すところなく定着されている。
森監督作品は何よりも見られるべきものである。鑑賞後に手に取るもよし、本書をきっかけに映画館に足を運ぶのもなおよし。
映画として編集する時には、時間的な制約がある以上、どうしても切らなくてはいけないところがある。基本的には映画で見られる場面について、撮影時の著者の「迷い」というか「逡巡」がじんじん伝わってくる内容だ。映像だけではどうしても伝えきれなかったものがあるからこそ、著者は(森さんも安岡さんも)この本を書かずにはいられなかったのだろう。
荒木さんが、住民たちから猛烈な抗議によって移転先の建物に入れず、立ち去らざるを得なくなった出来事は全国ニュースでも流れ、いまもまだ記憶に新しい。あの場面をテレビで見た森達也さんの言葉が、胸をきゅーっと打つ。
あのシーンを経て、さらに彼らを撮り続けた森さんの「姿勢」について、私たちはいまいちど立ち止まって考えてみる必要があると思う。
とにかく、映画と一緒にみることをオススメする。映画を観て、本書を読むうちに、日本で、同じようなことが繰り返されていることに気がつくと思うからだ。
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