突然の事故で意識不明の状態になり、病院のベッドでこんこんと眠り続ける男性と、毎日欠かすことなく彼に語りかける恋人。そんなふたりをめぐる、京王線沿線を舞台にしたラブストーリー。
……ということなのだが、残念ながら京王線沿線の住人ではない自分には、今ひとつ舞台のイメージがつかめなかった。京王線を使っている人には「わかるわかる!」という感じなのかもしれないけど「下高井戸」と言われても、ちょっと……。
まあ、そこは個人的な事情なので、作品のよしあしとは関係ないところ。
なので、京王線とからは感情移入しづらい自分としては、登場人物に期待したいところなのだが、これまた残念ながら、主人公がどうしてそこまで恋人のことを思っているのか、自分にはよくわからず。また、その他登場人物たちの動きも「なんでそこまで?」的な感もあったり。もう少し、人間関係・描写などなど、納得させてほしかった。
ストーリーの展開はすばらしいアイディアに富んでいるだけに、人物や背景の設定などの土台のゆるさが残念な印象の1冊。
と、本編に関してはそんな感じなのだが、実は本書の中で秀逸なのが、作中に登場する、作中作(?)としての2つの絵本のストーリー! 苦労して本編を書かれた著者には失礼だと思うが、絵本の部分だけでも十分に価値がある。ネタバレになってしまうので詳しくは書けないけど、特に2番目の話は涙なくしては読めない(電車の中で読んでいたので、さすがに泣かなかったけど)。このまま本当に、この話の絵本を作ってほしいと思ったほど。というか、もし作ってくれたら、絶対に買います。
そんなわけで、この絵本化に期待して星5つ! 著者には、今度はぜひ、大人向けの絵本を書いてほしいなあ。