執筆者が次の執筆者を指名し、“お題”を手渡すリレー形式が採られた短編集。
一番手の北村氏、それに続く法月氏の短編は、落語を下敷きにした、ほのぼの猫話
なのですが、三番手となる殊能氏の短編は、一転、酷薄なブラックテイストになります。
殊能氏が〈先輩に営業を押しつけられ、「俺の芸風じゃウケないだろうなあ」と
思いつつネタをやったピン芸人の心境〉という自嘲的かつ確信犯的なコメントを
記したことをを受けて、鳥飼・麻耶の両氏は「ある天才芸人の秘密」とでも称す
べき短編を繋げ、三部作とします。
お茶会を題材にした竹本氏の短編で文字通りティーブレイクした後は、たった
一個の「飛び石」のために、坂道を転がるように人生から転落していくサラリー
マンの悲喜劇を描いた、社会派風味の貫井・歌野両氏の二部作に続きます。
そして掉尾を飾るのは、ダブル・ミーニングを効かせ、切ない初恋
に揺れる少女の心の機微をあざやかに描出した、辻村氏の短編。
辻村氏の短編の幕切れは、北村氏の短編に、あたかも円環が閉じるかのように繋げられており、
それによって本書を長編として締めくくるという伝統の〈東京創元社方式(?)〉が採られています。
要するに、作風がそれぞれ異なる実力派作家たちの短編を、温かく愛らしい北村・辻村両氏
の短編で挟むことによって、ひとつの作品としての統一感が与えられている、というわけです。
各人の持ち味は存分に発揮されつつも、随所で共鳴反応が起こり、しかも
全体としての調和も失われなかったという、完成度の高いリレー小説です。