本書のテーマは、「パレートの法則(別名:80対20の法則)」のアンチテーゼである。すなわち、「20%の顧客が売上の80%を占める」と言われるが、残りの80%の顧客がかなりの売上を占めていることも多いという主張である。著者はこれを「ロングテールの法則」と呼ぶ。根拠は、IT技術の進化によって顧客とのコミュニケーションコストが低下(例えば、1人にメールを出しても100人に出してもコストは同じ)したので、顧客を絞り込む必要がなくなったということだ。
リピーターの増加に注力してきた会社にとっては、少し驚く主張であろう。但し、主張の説得力が弱い。まず、購買頻度の少ない顧客が売上の相当数を占めている企業の例がない。例示されているのは、販売頻度の少ない「商品」が売上の相当数を占めているという例だ。しかも、特殊な例だ。(デジタル素材販売企業が取り上げられている。この企業の顧客の多くは、他社と同じ素材を使いたくないだろうから、当然1社にしか売れない素材が多くなるだろう。)また、購買頻度の少ない商品を買っているのは、リピーター顧客ではないだろうか。商品にロングテールの法則があてはまるということは、顧客にはパレートの法則があてはまっていることにならないか。
本書の後半は、ロングテールの法則を離れ、IT技術を使ったマーケティング活動について書かれている。よって、タイトルと内容にズレを感じる。
本書は、ロングテールの法則を理解したい方に勧めるが、第1章だけ読めばよい。むしろ、IT技術を活用したマーケティング活動を行いたい方に有用だろう。