なんか不思議な作品でした。扱われているテーマは多岐にわたります。LCCから既存キャリアの戦略、航空行政、そして旅行の荷造りの秘訣(白いシャツの薦め)といったところまで扱われています。しかし全体を通して残る印象は、なんともいえない現実感の欠如といったらいいのでしょうか。これは世代の差なのでしょうか。それとも世界を相手にしているスケールの大きな人物に対して感じる嫉妬なのでしょうか?金融危機や世界不況に世界が揺れる中で、著者のメッセージ(個人開国)が、薄っぺらい非現実的なアジテーションに聞こえてしまうのは私だけなのでしょうか?タイトルに直接関係するLCCの話の中身はほとんどが海外の雑誌やサイトを見ていればでている程度の話です。何も新味はありません。航空業界と航空行政についての話ももはや常識となっている話です。でもこの部分に著者の個性がもろに出ているようです。著者はヒースロー空港と英国、そしてブレア政権をべた褒めしています。しかし、国内にもはや産業がない中で、不動産のバブルとそれを借金の増加だけでまわしてきた英国経済が今抱えている問題の深刻さについては、そのかけらすらこの作品に描かれることはありません。僕たちははたして同じ世界に生きているのでしょうか。著者と同じようなプロデューサーにtyler bruleがいますが、彼のfinancial timesのコラムではまったく著者と逆のメッセージが流されています。そこでは、ヒースローはぼろくそにいわれていて、必ずしも成田は酷評されてはいません。そして不思議なことに、日本のエアラインのサーヴィスや職務遂行の素晴らしさ、そして東京のショップの先進性がべた褒めされているのです。どちらもそれなりの利害関係を背負っているのはいうまでもないことですが、ここまで逆の評価になっているのは皮肉な現象です。ただ、著者が最後に唐突に述べる「思い切った鎖国」の部分についてはもう少しその真意を含めて話を聞きたかったですね。