定年、老後読本は巷に多い中、本書は定年後間もない人のごく日常的な生活を、85のテーマを2ページ毎に纏めた読み易く好感の持てる、60代の為の書だ。著者は1945年生れだから団塊世代の数年前の現在65歳、京都大学大学院(建築)、大成建設入社。役員の一歩手前の理事にまでなれば社内で大変成功した社員だったろう。まず60歳から云々という定年後本では、70代位の著者の作品だと往々にしてややズレがあり、お仕着せ調、余計なお世話的、ということがあるが、本著者は65歳と我々に年が近いから、等身大の全く同じ境遇という意識で読める点が良い。またよくある類似本には、定年後はNPOだ、趣味だ、田舎暮らしだ、投資だ、海外移住だなどと、はしゃぐ書が多いが、本書はごく身の回りの誰もが思い考える行動パターンについて、著者の経験、気持ち、考えが短く纏められたもので、紹介もの、説教ものでない点が良い。内容的には、energeticな言動はせず、淡々と自分の生活を無理することなく、周囲との調和と協働を大事に、という点でほっとする思いである。著者は生保・損保より人間関係を固めた「自己保険」を重視したり、人の話を聞くのが出来ない欠点を自覚しており、narrative counselingを学んだり、なかなか立派である。 団塊世代は基本的には困った世代であることに異論はないが、それを認識すると共に本書第4章「地元の一歩」、第5章「新しい仲間」、第7章「自分を見直す」等々に目を通し、団塊世代還暦組が増えた近所での噂や嫌われ感を一掃するよう、全員自助努力は必要であろう。