「引き際はきれいに」という人生の美学、また「立つ鳥跡を濁さず」で古いものとの決別。年齢相応な生き方をし、人間に自然に備わる性行に対して素直になること、また爽やかな気分で楽しみ、日々時々刻々を生き、社会と周囲に迷惑をかけぬよう、と教える書だ。第1章から第6章まで各々8項目、計48のテーマを4ページ毎に纏めてある。著者は1935年生れ、59年東大/法卒、35歳で独立、45歳で17歳下の女性と結婚の由。人生における金銭の計画性は極めて希薄で、設計図的なものはなく、出来るだけ無駄を排する、借金なく、借家住まいと書いておられる。安住出来る終の住処はないが、それで自由が得られ、自分を閉じ込める気にはならない為とか。定年や老後関連の書は巷に多いが、「定年後」(岩波新書)や「定年後のリアル」(草思社」に比べれば、本書は読む価値がある。本書の48テーマはごく当たり前のその通りの指摘である。参考になったのは、夫が財産の目録作成し、各種手続きの連絡先を細かく、しかも「大きな文字」で配偶者に残してあげること、人に好感を与える「お洒落」を心掛けること、か。本書で気になるのは、「年寄りの長所を生かす前向きの姿勢」、「60年生きた年寄りの長所は経験と知恵」 の如く「年寄り」という単語が頻出する。しかし団塊の世代の還暦組で「年寄り」を自認する人は少ない。昔の60代は今の70代以上に相当するだろうから、本書タイトルも「70歳からの・・」とした方が良かったかもしれない。但し60歳でも肝に銘じるべくは、組織・名刺・肩書・虎の威を失って、でも過去の経歴を嬉々と披歴する御仁、また自分は偉かったんだぞと言いたくてしょうがない御仁、斯様な爺婆は周囲に多いと思われるので、該当者は本書を読むべし。