今日のヨーロッパ統合にもつながる内容で、古代以来のヨーロッパ全体を見通した通史には、すでにヨーロッパ人の手になる良書が幾つか訳されているが、例えば、もし学部1年生に読ませるとすれば、クシシトフ・ポミアン『ヨーロッパとは何か』(平凡社ライブラリー)はちょっと格調が高すぎる感があるし、ル・ゴフ『子供たちに語るヨーロッパ史』(ちくま学芸文庫)では物足りない。その点、この本は、ヨーロッパ理解に欠かせない50項目が掲げられていて、その中には、宗教改革やフランス革命など超重要項目だけでなく、イタリアの統一やオーストリアのハンガリー併合はそれぞれ1項で、北欧や南欧にも配慮があるので、読みやすく、バランスも取れている。高校世界史を学んだ人にはスラっと読めるし、大学教養レベルの知識は十分身に付くでしょう。ドイツで博士号を取った訳者の訳も読みやすい。
ただ、せっかくの全ヨーロッパ的歴史なのに、訳語の表記(日本では各国の表記に合わせるのが原則)には若干問題があって、特にイタリア語の表記は頂けません。ジュゼッペ・マッツィーニが「ジセッペ・マチーニ」となっているのは、特にダメで、ファースト・ネームが同じジュゼッペ・ガリバルディとの統一もとれていない。サルディニア・ピエモントもサルデーニャ・ピエモンテに直してほしいが、日本語ではサルジニアという表記も多いので、これはまだ我慢できる。しかし、ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世が、「ヴィクトル・エマヌエル3世」と書かれるのは、一体どこの王様という感じで、許し難い。これらは世界史の教科書や文庫本の通史でもチェックすれば、確認できるレベル。
「後世」が「構成」に、AllemagneがAllemogneになるなど、訳者というより編集者が経験、知識不足なのだろうか、誤記、誤植も少なくない。