石田氏の作品は何となく「自分に合わない」気がしていて敬遠していたのですが…これは新聞連載当時から楽しく読んでいましたので、1章分加筆して出版!ということで喜んで買いました。
「いい学校」といわれており、先生にはやや「重たい」公立小の若手教師・良太先生は、熱血とはいかないまでもフツーに教育に熱い思いを持っているフツーの先生。この本では良太先生の学級内や職員室内で1年の間に起こる問題がいくつか採りあげられるのですが、これが今の時代の問題として絶妙です。教室から脱走してしまう子、先生間のパワハラ、自宅に放火?疑惑の兄弟…上っ面だけの作りこみではなく、細部がきちんと丁寧に描かれていて、それでいて結末はさらりと締める。その鮮やかさに「敬遠していてごめんなさい!」と脱帽です。
良太先生のクラスで持ち上がった問題をさりげなく解決に導いてくれるのがやや年上のクールガイ、染谷先生(石田氏によれば、ビジュアルは及川光博さんのイメージらしい)です。この2人のコンビの活躍で、良太先生のクラスあるいは学校の抱える悩みが解き明かされていきます。「どたばたしがちな主人公+度量の広い、頭脳明晰な相方」というのはよくある組み合わせですが、この作品では特に素敵な光を放っています。
この作品は石田氏から漱石の「坊っちゃん」へのオマージュでもあるとのことですが、ストーリーテリングや描写力がはるかにスマートで温かい読後感を呼ぶのでこの評価とします。