表題の通り、近未来に予測される日本と世界の姿を描いている。
各節ごとに、コンパクトに予測を示してわかりやすい構成になっている。
大きく見れば、米国は金融大国、中国は世界の生産工場というコア・コンピタンス(競争力の源泉)は揺らぎつつあり、米国は世界秩序への関与能力は低下し、中国は国際社会の中の異質性と国内の権力闘争とバブルや格差問題から硬直した状況になりつつあるとする。
そのなかで、世界は「無極」時代に突入すると予測している。
なかでも、日本について触れた第2章に注目したい。どちらかといえば、判断を明確に示さない田中氏にしては珍しく、日本への悲観論に彩られている。
それは、ここのところ多くの識者に見られる予測とほぼぴたり一致している。
すなわち、このまま財政赤字を国債によって賄っていくと、恐らく2015年には、国内での国債消化が不可能となり、金利は急上昇し、外国人による円売りと日本の預金者の外貨買いによる円暴落といった暴力的な「市場の反乱」が起きると予測する。
皮肉にも、ここに至って初めて業界再編と輸出企業の価格競争力の回復、政府債務の実質的な減額が起こる。しかし、この時点では外国人による日本買いが待っている。
恐らく、アジア通貨危機の韓国がそのモデルになるのではないかとする。
もちろん、著者が提示するのはあくまで最悪のシナリオとしてではある。
しかし、本書に提示されたカナダの財政再建のようなモデルは、この国では「弱者への負担押しつけ」とか、「地域社会を壊すのか」といった批判の嵐の中で、困難を極めるのは間違いない。
著者の提示した最悪シナリオでしか、改革への道のりを始めることはできないのかもしれないと感じた。