自分の考えが袋小路に入った時、自分とは異なる思考パターンが脱出を可能にする。本書に紹介された新鮮な挿話がそうしたチャンスを提供してくれる。
1つ紹介しよう。“なぜラビ達は、シャマイとヒレルが法廷で裁判官多数の意見を凌駕できなかった場合も、彼らの意見を記録に残しているのか?”という箇所では、ユダヤ人の歴史において、多数決で選択したことによる失敗例の少なくないことが示される。そうした遠い過去の事件が記憶にあるためか、ユダヤ人の間では多数決の決定事項の記録とは別に、反対意見を述べた少数派の発言も記録にとどめる習慣があるそうだ。
その理由をタルムードは3つの視点から説明する。
1)権威主義に流されないため
2)多数決の正当性は数だけによって決定されるものではないこと
3)意見の多様性を認めるため
少なくとも対立する2つ以上の考えを知っておくことが、思考の枠を広げる。この多様性が、ユダヤ人が2000年の離散に耐えて今日まで生き抜いて来られた理由だそうだ。