大変気に入っている演奏。
ただ、おそらくこのCDは1番の一音めからすでに好き嫌いが分かれるだろう。
いきなり硬質で痛烈な打鍵から始まり、終始そこで聞けた硬質な「音」でスケルツォが支配される感じである。
個性的なアーティキュレーションや際立ったダイナミック、独特な和声の扱い方などポゴレリチらしいのだが、個人的にはかつてのポゴレリチ程「やってくれるなぁ」というような印象はない。まっとう、とは言えないかもしれないが、異端といわれるほど異端とは思えないきっちりと構築された音楽が聴けると思う。が、しかし、それ以上にこのCDはもともと硬質な音色のポゴレリチの音ではあるが、特にその傾向が際立っていると思う。ここまで徹底した音色で弾くことで、テンポの揺れや、極端な強弱でともすると破綻しそうな曲を破綻させないようにしたのではないかと思えてならないのだ。
この音色に対して拒否反応を示さなければ、これほどスケルツォの諧謔性を楽しめる演奏もないと思う反面、音色についていけなければ、ただただ硬いだけのピアノ曲に終わってしまうのではないだろうか。
個人的には少々あざとさも感じるものの大変気に入っているのだが、他人にスケルツォの演奏としては安易におすすめする気も起きない。
かなりエコーの多い録音の上に、硬質な響きで録音されているので再生環境にも左右されるかもしれない。もしもよい再生環境をお持ちの方ならば案外気に入られるのではないだろうか?
しかし、スケルツォの4曲だけというのは近頃の盛りだくさんのCDと比べると少々寂しいと思われる人もいるかもしれない。少なくともバラードの4曲くらいはいれて欲しいと感じられる方もいるのではないか。そういう意味でもまるっきりの初心者の方にはおすすめしにくいCDだと思う。