360度評価、360度フィードバックに関する書籍の多くが、単に制度設計手法の解説をしている中で、本書は「そもそも論」に始まり、「プロセス」における成功要因、また豊富な事例や導入企業の実態を解説しています。
様々な仕組みを短絡的に導入する企業が多い中、本書は360度フィードバックの導入を検討している企業、また導入したが上手くいっていない企業に対して有益な情報を与えてくれると思います。
タイトルが360度フィードバックであることから、このテーマに興味がある方を対象とした文章構成となっていますが、章立てを入れ替えると、人材育成のあり方、考え方、成功要因を明示し、その一つの有効な手法として360度フィードバックを捉えていることがわかります。
本来であれば人材育成をテーマとして章立てしてもらったほうがわかりやすいのですが、重要なことを重要な手順で述べる本よりも、読み手が飛びつきそうなテーマの本の方が売れるご時勢ですので、この構成はしかたないのでしょうね。
あと、本書のなかで気付きにくいところですが重要なメッセージとして、人材の強みを活かすこと(弱みではなく)、多様性を活かすこと(均一性ではなく)を説いています。
人事の仕組みを検討する際に、とかく均一的な人材像をベースとしていることが多いのですが、これからのマーケットを考えると、均一的な人材を揃えていても勝ち抜くことはできません。また、ヒトはそれぞれ異なるものですから、ヒトのそういった特性を前提として検討したほうが上手く行きます。
企業もそろそろヒトに対する少品種大量生産の呪縛から離れる必要がありますので、このメッセージは本当に重要だと思います。
なお、このメッセージの中で登場する「多元的知能」は、心理学者のハワード・ガードナーが提唱したものだと思います。「多元的知能」について興味のある方は、ハワード・ガードナー「MI(Multipul Intelligences)」を参照してください。