私はある大企業で約10年勤務し、その後独立し自営業をしている身ですので、在籍する企業をうまく活用することや【寄業人】という意味も理解できます。私の居た企業では90年代前半にポスト不足が顕著に表れ、将来不安が漠然とありました。ですので、社内に残る残らないに関わらず、その当時から企業を利用し自分を伸ばすことは、私の世代だけでなく先輩も自然とそうしていました。よってこの本では特に目新しいことには感じませんでした。
そして、誰に役立つ本かを考えると、やはりリクルートのような社風の企業のような狭き門を通れた給与も含め恵まれた立場の著者だからできたと感じる部分が多かったので、著者と似たような境遇の人には良いと思います。そのため、給与も含めそのような境遇でない20〜30代の人の方が圧倒的に多いですから、著者が勧める1万時間という仕事のハードワークをしても、自分を成長させることができる環境(企業の社風・教育システム・人間関係・自分に投資するための余裕ある給与)にあるか?というと、非常に疑問に思います。
また、名刺に頼らないで仕事をすることの重要性も説いていましたが、著者の活動は過去のリクルートの看板が基礎にあるからこそ、またそれを活かして社会に注目されるような実績を積んだからこそ、できるような内容に感じました。名刺で語らずして、個人で売り込むことができるようになるには、どれだけ大変なことかには触れていません。その大変さは、自営業の人や中小企業の社員や経営者には良く理解できると思います。きっと、著者にはそれまでの実績から、そのプロセスを踏まなくてもできたように思います。
その他に、意図的に仕組まれたように感じがっかりしたことがあります。それは、あとがきの内容です。ソニー生命の営業マン像はこの本に書かれているような人ですから、そのような人はソニー生命の営業マンになってくださいと言わんばかりの内容でした。このようなあとがきなら、【PR】の文字をつけるべきだったと思います。このような他者の宣伝めいた記述は他にもあり、ある特定の人物の発言や人柄を引用する際に、いかにもその人物の著書を宣伝するような言い回しがあったことも気になります。たぶん、この人物の著書でも、この本の著者が登場してくるのではないかと感じるくらいの記載内容でした。このことは、多くの人に読んでもらいたいというよりも、少しでも多く売って印税を得たいように感じる部分でした。しかし、大阪府の教育に関わる仕事を無給で行うためにこの本の印税が生活費として必要だと記載してあったら、全く感じ方が違うところです。
この本についてかなり批判的なレビューですが、良い部分もあります。しかし、著者が説くこの本に記載されたことを実践するには、肩書を重視する既得権益層がある程度崩されないと、現在の日本では厳しいように思います。その既得権益層を一部の業界でもぶち壊すことができたら、この本はより多くの人のために役立つでしょう。そして、その既得権益層をつぶす役割は、この著者のような社会的立場の人や世代に思います。