「彼女を泣かせた人間を八つ裂きにしてやりたいが」
殺気立つ零のモノローグから始まる第6巻。既に描かれているように、大人しそうに見えて実は「獣」のような戦闘性を秘めている零の一面が、ここでも描かれる。
ただ、ここで彼が成長を見せているのは、どんな形にせよ「自分の不幸」の殻を抜け出して、「ひなの為に」何かをしようともがく点であろう。その姿は甚だ不器用ではあっても、確実に彼に接する者の心に届く。
「人を頼れ。でないと、誰もお前を頼れない」
林田先生の言葉の通り、これまで零にとっては「母性」を代行する存在であった長姉あかりは、はじめて零に年齢相応の不安と弱さを見せ、零に助けを求める。前巻からの伏線と対応する形で、強く零の成長を印象づけた。
一面、年齢相応に考えすぎ、空回りして暴走する零も微笑ましい。
一方、中学校でイジメと戦うひなた。
作者の親族の実話をモチーフにしているだけあって、非常にリアルで辛い。私事ながら私も小中9年間をいじめられて過ごしたので、他人事と思えなかった一方で、自分はまだ男でよかったと思える女子のイジメの陰湿さがリアルで泣けた。この辺りの描写力はさすが女性作者である。
担任教師の卑怯な無責任さも、私自身も経験があるので悲しいくらいリアル。鼻血が出るほど怒り狂ったひなたと「急に 目の前が 真っ赤になった」という零の怒りに、恐らく全読者が共感したのではないか。
ここで描かれる、まっすぐなひなたの「戦い」は凄愴なまでに切ない。その中でも優しさとまっすぐな強さを失わないひなた。
「はげましに来たのに、気をつかわれてどーする、桐山零!?」と自分自身にツッコむ零には笑った。
行間に挿入される、ひなたの初恋の少年高橋くんとのエピソードがまた良い。一見あっさりしたエピソードに見えるが、男性ならわかると思うが、女子独特の世界に、特にイジメが絡む中で男子が入っていくのはとてつもない勇気と男気がいる。
彼もまた「戦う者たち」の一人である。
巻後半クライマックスに向かって、今度は二階堂の戦いが描かれる。
彼にはモデルとなった棋士がおり、その棋士は20代で既に病死している。二階堂の病名は作中明らかにされないが、読者には明らかにわかるように描かれており、二階堂の背負う十字架の重さが切々と伝わってくる。
「魂を搾り出すような138手」
新人戦準決勝で見せる。魂を、そして文字通り命を削っての二階堂魂の戦い。その姿には、もう言葉がない。
そして、決勝。高橋くんの、二階堂の、そしてひなたの「戦い」を糧にして自分の戦いに望む零。王道パターンの描写だが、ここまで丁寧に描かれるともう作者の力量には脱帽。そして戦いの後、零が真っ先に向かった先には−。
・・・5巻までの伏線を全て活かしきった、怒涛の6巻。今月から再開された新章が楽しみで仕方がない。