原子力の最大の問題が「経済性において劣悪」であるのをいまだに理解していないだけでなく、エネルギー政策に関する研究も浅く、情報が古い。10年以上前に「脱原発が最も経済性に勝る」「原子力の本質は軍民両用性」と喝破した吉岡斉教授(科学技術史の専門家)の著書すら読んでいないのは正直、情けない。
今回の大震災で「最も評価を落とした知識人」との称号を献呈される可能性極めて大である。かつて池田氏が雇用・経済政策について散々に批判した官庁の人々(資源エネ庁を除く)は内心、論敵のオウンゴールに快哉を叫んでいるであろう。
大島堅一・立命館大教授は原子力のバックエンド費用の試算がいい加減であり、従来想定の3倍以上の74兆円に達する可能性に言及されている。飯田哲也氏も指摘されているように、原子力のコストはインフレを起こしていて再生可能エネルギーに対しどんどん不利になっているのである。
『週刊東洋経済』2011年6月11日号 原子力 暴走する国策エネルギーガス利用に関しても、JOGMECの石井彰氏が何年も前から指摘されている主張より当書の議論は古い。熱電併給しなければエネルギー効率は高まらないし、そのためには電力の中央集権体制の打破が絶対必要である。経団連からカネを貰っている澤氏などではなく石井氏に執筆を要請すべきだ。
『天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学』石井彰まともな経済学者ならば、野口悠紀雄教授や鈴木亘教授のように電力の価格メカニズムを論じて当然であるし、梶山氏の著書等でドイツのきめ細かなインセンティブと産業振興策を研究する方がよほど有益だ。
『日本林業はよみがえる』梶山恵司復興策に関しても八田達夫教授による漁業の「オリンピック方式」への批判の方が遥かに優れている。飯田哲也氏のように「東北は恵まれた風況を生かして風力で50%電力自給」も良い。低コストの浮体風力が実現したら日本企業が世界の海を制覇できる。
しかるにこの著者は日頃散々にターゲティング政策を批判しておきながら「選択と集中」が必要だと曖昧な総論でお茶を濁していてガッカリである。負け組MSの原発開発(実用化もされていない)を強調しておきながら、グーグルの再生可能エネルギー投資に触れず、理論変換効率75%の量子ドット太陽電池を黙殺しているのも明白な知的怠惰だ。澤氏がかつての同僚とのことなので、単なる crony capitarism の亜種かもしれないが。