息子の漣さんが、中で思わずつぶやく。
「今日はいつもより調子いいよね。」
高田渡さんが、自分で自分のことを称して冗談みたいにつぶやく。
「今日は、息子の漣と一緒にやります。こういうことは滅多にありません。最初で最後かもしれません。あんなに元気だったのに・・・ということもある。」
そんな言葉が染みる。
プロデューサーの、「渡さんのライブは、息子の漣さんが一緒にいる時は、まともである確率が高い。」という読みも、いろんな偶然も重なったのだろう、終始まっとうで、歌声は後半に進むに従って次第に熱を増してくる。
へべれけになって、本当にステージで寝てしまう渡さん。客に起こされて、ギターも歌詞もおかしくなりながら歌う渡さん。それを嬉しげに優しく見つめる女たち。ああ、これが高田渡の伝説のシーンなんだとでも思うのだろうけれど、・・・。そんな姿もよそでは見たことがある。でも、そんな姿は、僕には、ほほえましいというより辛かった。女たちよ、そこは笑うところではないだろう、そう思った。
高田渡は、なぜ飲んだくれていたんだろう。
そんなことを思いながら、ここで「生活の柄」を聞く。
心に染みる。
高田渡が、(ほぼ?)素面で、一枚しっかりライブをしている。もっとも、例の調子で、途中で息子に、「お前ちょっと一曲やっておいてくれ。」なんて言い置いてよそに行ってしまうけれど、そんな甘えがまた温かく彼を励ましたのかもしれない。ついでにステージ脇で一杯ひっかけて来たのかもしれない。とにかく、戻ってからの歌は、更に一層素晴らしく、彼の最高の出来のライブだと言える歌声が響く。その場に合わないけれど、「鬼気迫る」なんて言い方をしてもいいのかもしれない。聞きこんでいるうちに、やがてそんな気がしてくる。ギターもしっかりはじかれて、力強く美しい。漣さんとの音楽を通じたホットな絡み合いも、音楽アンサンブルとして、一流の素晴らしい出来だ。
その上、歌が染みる。
これが、こうして手に入る形で残された。奇跡的な幸運だと思う。聞けてよかった。