多重人格という症状が身近でないからなのかどうしてもピンとこないところもある。だけど、多重人格者の内的世界はこういうことになっているというのがよくわかる本だった。
それにしても多重人格者ビリーの世界は驚くべき世界だ。にわかに信じることが出来ない。最初にビリーを診察した精神科医や弁護士たちと同じように。怒りを感じたときはレイゲンという人格が現れビリーを守る。肉体的痛みは小さなデイビッドが引き受け、相手と話のやりとりをするときアレンが、そしてそれらの人格をアーサーという人格が統制している。とても論理的思考のもとに。
それらの人格はビリーという人間を守るために、自身がつくり出したものにすぎない。人間の想像力は恐るべきものだ。その想像力には胸を打たれる。生きるために働く想像力。
作家はそんなビリーの世界を真摯に受け止めようとしているし、冷静に状況を判断しようとしている。良質なドキュメントの一冊である。