古典落語になってしまったジャズ。「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とか、スタンダードナンバーをピアノトリオで甘ったるく演奏すれば、それがジャズなのだろうか。たしかに、前座の噺家でも、少し「お勉強」して、「寿限無」とか確実に笑いのとれる噺をすればどうにかなるかもしれない。じゃあ、ジャズとはそういう「お勉強」なのか?
ここにあるのは、そういう「古典落語のお勉強」とは無縁の音楽だ。ベーシスト2名(それぞれ、ギターシンセやエフェクターを使用)、キーボードとパーカッションというメンバーに、ゲストとして菊地成孔が加わる。本当にこれがライブの音なのか? シーケンサーは使用せず、緻密なアンサンブルにより信じられない強度を実現している。まるきり音楽の世界は異なるが、マイルスの『ビッチズ・ブルー』や、キング・クリムゾンの『太陽と戦慄』や、ジョン・ハッセルの『ドリーム・セオリー・イン・マラヤ』を初めて聴いた時のような、新鮮で未知の音世界がここにはある。それこそ「ジャズの既存の言語の壁を越えようとしている」(ライナーの座談会より)音楽なのだ。
東京ザヴィヌルバッハやDCPRG、またジャコ・パストリアスが好きな方はぜひ聴いてほしい。(それはそうと、アルバム・タイトルの元ネタは吉本隆明だったんですね。うーん。)