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本書の最大の特徴は、ある歴史学者が2112年に前世紀の100年間を振り返るという形式だ。当然、歴史の中ではすべてが確定した事実として語られる。歴史書の形式をとって、豊富な資料をもとにしたノンフィクションとして描く手法により、本書はありきたりのSFとは異なる説得力をかもし出すことに成功ている。内容は21世紀に「人間の行動を根本から変えた」バイオ革命、核戦争、世界恐慌、世界秩序、ネットワーク社会、宇宙開発の全6章。歴史の流れを記すだけでなく、英雄から市井の人々まで、その時代に生きた人々の物語を随所に織り込んで“歴史”に厚みを持たせている。
本書を魅力的にしているのは何といってもそんな人々の物語だ。自ら開発した遺伝子操作技術により自分の子どもを死に至らしめたギリシャ人、700万人が犠牲になった印パの核戦争を機に非核化運動に身を投じた医師、カオスと呼ばれた恐慌ですべてを失ったフランスのワイン農家など――リアルな描写で、いずれもぐいぐい引きこまれる。
最先端の科学的知識をもとに描いた未来像に関しては、ベースとなる知識が豊富で感心させられる部分もあるが、いみじくも著者が本書の一説で「予測結果というものは、仮定の条件しだいである」と言うとおり、おそらくほとんどは当たるまい。100年におよぶ未来予測は人智を超越した仕事である。だが、クローン人間の誕生や高度に発展したネットワーク社会など、仮説としての興味深さは確かにある。著者のひとりのマイクル・ホワイトは過去に『The Science of the X-Files』という本を著しているが、本書はまさしく「Xファイル」のように楽しむのが本筋だろう。(齋藤聡海)
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