追い求める者は磁力のように事象を引き寄せるというのが読後最初の感想。
その後は沸々と旅は人生の縮図だなぁと思ってみたり。
本書は2001年911から2011年311までに“よろずエキゾ風物ライター”である
著者が中東における音の今を追い求めて出会った記録が軸になっているが、
単に日本で馴染みのない中東音楽を紹介した本ではない。
中東、音楽 というキーワードを除いても読み物として滅茶苦茶面白いのだ。
320頁2段組というボリュームを気負いなくスラーっと読めるのは本書の構成がいいのか、
著者の語り口が巧妙なのか、いずれにせよ読み進めるうちに何か特別な力が文字を
追うように働きかけていると思わせるほどの文体と内容に仕上がっている。
著者がワールドミュージックや中東文化に精通していることは勿論だが、
下地にブリティッシュ・ロック、ニューウェーヴ、パンク、テクノを始め様々な
クールな音を聴き続け、それに引けを取らない中東音楽の今を紹介している所が本書の味噌。
つまり中東音楽童貞でも本書をガイドにYoutube検索すれば新しい風を
自分に吹き込むことが出来るのだ。
一方、旅のガイドブックとしても秀逸。私は本書で初めてイエメンという国に触れることができた。
旅のラスト、中東音楽の集大成として訪れたエジプトでは革命に直面する。
なんと映画的だろうか。
中東の音を追い求め中東文化にどっぷり浸った著者は気付けば中東の歴史の一頁の最中に居た。
他にも伝説のベリーダンサーやトルコのサイケデリックバンドから忠犬ハチ公ドラーバーまで
感情移入できるキャラクターの登場はさながら冒険小説を読んでいるようだ。
中東マニアは勿論、中東童貞にも間違いなくお勧めの読中読後100%満足の一冊。