政府債務が成長率を低下させる「ロゴフ仮説」はつとに知られているが、「世代間格差と成長率が負の相関性を持つ」ことを指摘したのは著者が初めてではないだろうか。(しかも後者の方がより深刻!)
理系らしい視点であり、大胆な数理分析を行う一方で、現実政治において生じる甚大な抵抗力や事実検証に触れないのが当書の特徴である。 しかしそれを勘案しても限りなく5つ星に近い4つ星、必読の労作と言える。 日本財政と世代間格差の惨状を知る者にとっては殆どが既知の情報であるが、こうして数値の裏付けを見ると改めて唖然とする。
短所としては経済政策や社会保障政策への研究が浅い点が挙げられる。
北欧諸国がなぜ間接税を段階的に引き上げたかに言及していないし、「成長率の高い大きな政府」として知られる北欧諸国は、緩い解雇規制と引き換えに就業支援へ多額の公費を投入し、成長分野に労働者を移動させるとともに、教育・育児支援・介護部門で女性雇用を吸収している。
『フィンランド 豊かさのメソッド』法人減税で外資を優遇・招致し成長率を高めた英・愛蘭の事例も言及されておらず、そうした処方箋は他書で補う必要があろう。
『アイルランドを知れば日本がわかる』尚、少子化問題に関しても「就労逸失によって多額の収入減」となる女性(=大卒エリート)は3割にも満たないことを付言しておく。仏や北欧等の高出生率国(女性労働者は非正規雇用が多いが育児支援政策・予算とも充実)と比較し、もう一歩の踏み込みが欲しい。
そして最大の欠点だが、50代以上の有権者が既に4割を超える現在、「世代間公平」は政治的目標とは絶対になり得ない。「社会保障を支えるため、社会保障給付を減らし女性・若年層の雇用増予算へ移転」しかないのが現実である。