内容紹介
財政再建団体になった直後の2007年5月に、夕張市の市街地、ズリ山、かつての炭鉱住宅などを撮影したカラー写真集。 山間の谷にある夕張市の清々しい空気が感じられる風景、人気の絶えた街路、昼の光の中で風化し塵になりそうな飲み屋街、樹木の茂る谷間にぽつんと異様に建つ観覧車とジェットコースター、小雨の降る中の寂しげな縁日。かつての炭鉱住宅に咲き乱れる水仙の花と独り暮らす老女。 六本木に東京ミッドタウンができた年の日本の北の街の光景。 1963年閉山直後の常磐炭田小野田炭礦を撮影した「1963 炭鉱住宅/メモリアグラフィカ no.1」写真・丹野清志と同時発売
レビュー
「日本カメラ」2008年4月号ブックレビュー<昭和と平成、失った痕跡を確認する旅> ここに2冊のユニークなデザインの写真集がある。グラフィカが同時に送り出した『1963炭鉱住宅』と『2007北海道夕張市』。かたや1963年もう一冊は2007年に撮影されたものだが、共通してテーマは捨てられた炭鉱もしくは町。石炭エネルギーは戦後の日本の経済成長を支え、全国各地で勢いのある産業として栄えていた。『1963炭鉱住宅』は丹野清志が、学生のころ故郷の福島で常磐炭田の小野田炭礦が閉山することを知り、その夏の一ヶ月を費やして撮影したもの。この年はオリンピックの前年であり、「吉展ちゃん誘拐事件」「狭山事件」で世の中が騒然となった年でもある。『2007年北海道夕張市』は伊藤愼一が仕事で訪れた夕張市を5日間で撮影しまとめたもの。おりしも夕張市は財政悪化のため、財政再建団体に移行したばかりだった。『1963炭鉱住宅』では人々が生活を営んでおり、この後の展開の予測さえしない明るさが残っている。『2007年北海道夕張市』は失ったものの大きさを物語っている。この2冊の写真集を手にすると、時を経ても同じ過ちを繰り返す愚かさに思いをいたさざるをえない。