「たかじんのそこまで言って委員会」でなじみの深い辛坊氏と京都大学原子炉実験所 高橋教授の対談の形で進められる質疑をまとめたもの。対談形式だから、一点の疑問でもあれば辛坊氏がすかさず質問し疑問を残さないので非常に分かりやすい。
その点では、感情論が多かった「原発・放射能 子供が危ない」とは対極の良書です。私が本書を読んだ理由は、なぜ子供には年間の被ばくが20mSv以下ではだめで、既に自然界からの被ばくが約1mSv/年あるのに、原発からの被ばくが1mSv/年以下でなければならないかが頭脳明晰な著者たちであれば的確に明示してくれているであろうと思ったからですが、一部理解できた気がしました。
というより、本書では高橋氏が「まず大前提を申し上げると、結論から言って、低線量の放射線が人体にどんな影響をどの程度与えるかは分かりません」(101ページ)と正直に述べているのに好感が持てます。
結局、被ばくによる健康被害は、広島・長崎の急性被ばくのデータしかないため誰にも分からないため厳しめに基準を設けていることが理解できます。その他、男性に不妊の生涯が出るのは200ミリシーベルトからとか、女性の場合は500ミリシーベルトからなので、福島原発事故で普通に避難した住民には被害は出ないなど冷静に分析されています。
同時に、京都市の「大文字送り火セシウム騒動」に関しても、薪1トンから出る煙を1人が全て吸い込んでやっと19.5ミリシーベルトの被ばくにしかならないと、京都市の馬鹿げた対応を弾劾しており、本書の記載内容の冷静さが改めて明確になっています。
本書の内容の99.9%に賛同できますが、ゾウリムシに低い線量の放射線を当てると当てた方が長生きするというデータを紹介しているものの、なぜ子供には年間の被ばくが1mSv/年以下でなければならないかに反論するデータには「現在のところなんとも言えない」と、たった3行(112ページ)のみでした。すなわち、台湾で誤って放射能を帯びた鉄骨で作られたマンションから生涯500mSv慢性被ばくした住民や(Dose Response. 2006;5:63)、年間50mSvの被ばくにさらされている米国原子力潜水艦工場の従業員(J Radiat Res 2008;49:83)でガンの発症率が全く増えていないデータなど、具体的なデータに対するコメントがないのが唯一の不明瞭な記載でした。
ともあれ、福島原発事故でこれまで起きたこと、これから起きうるであろうことを、明快に解説したお勧めの良書です。