いわゆるサイコサスペンスや人格破綻や精神がテーマの作品は、陰鬱だったり悲惨だったりエピソードに犯罪的な辛い描写があって、興味はあっても手に取りにくいジャンルだと思うのですが、この作品に警戒心は無用です。
翻弄される主人公は健気で一途でひたすら受け入れようと努め、強引な酷い目にあってもそこはBLドリームで辛さをかわすので、後味の悪さを聞かなくて済みます。
トラウマの原因や境遇も一般的には徹底描写のある作品が多く、嫌な現場を聞く羽目になるものですが、こちらは説明だけでサラッと済ませてくれるので、やはり辛い状況を聞かずに済みます。
主人公二人の描写だけに絞って物語が進み、脇役が出てきてかき回すこともなく、ミステリアスで緊張ある物語が、アダルティな場面を惜しみなく挟みながら切なく物悲しく終幕へと進みます。
本来異常で怖いテーマですが、どろどろしている核の部分を見せず、愛で救われる綺麗でシンプルな物語に仕上げてあります。
真剣にサイコの問題を突き詰め、シリアスに掘り下げる物語ではありません。問題提起と解決の重い物語ではなく、献身と救いの童話です。救いと喪失が同義で、悲しさをしっとりと描いています。
疲れる事無く楽に聞け、そして深い味わいが残ります。バランスのよい非常に良く出来た作品だと思います。
ただ、一般的なガンガンと説明や状況描写のあるサイコサスペンスを期待すると、上っ面をなぞっただけの中身の無い浅い物に感じると思います。
掘り下げるという作業は聞き手にまかされているので、関係性や過去の事件、背景状況が作品できっちりと説明されていないと納得できない場合、その辺は無いに等しく物足りないと思います。
キャラが魅力的ですし、シリーズ化して丁寧にじっくり描いて欲しい作品です。