前作「マラッカ」が1970年代へのトリビュート・アルバムなら、本作は80年代以降世紀末に向かって放たれた予言のような傑作、マラッカ・1980Xの2作がパンタのキャリアの頂点であることは誰も否定しようがないとおもう、
「ルイーズ」は世界初の試験管受精ベビーの名前、80年代以降繰り返し世間を騒がす「トリックスター」とマスコミ(パパラッチに代表される覗き趣味)の胡散臭さを歌う「モータードライブ」、より都市化され孤独を増す人々を歌う「トゥ・シューズ」「キック・ザ・シティ」、コンピュータ利用増大による管理社会をわらう「IDカード」、パンタの好きな内燃機関付個人用移動手段に社会を映す「Audi80」と「オートバイ」、
きわめつけは元号の変わる瞬間を歌った「臨時ニュース」と理不尽な暴力衝動を歌う「ナイフ」、さすがのパンタの想像力も昭和の終わりがあれほど粛々と訪れる事は予想できなかったわけだが、「ナイフ」で歌われた不気味さは逆に現在を見事に言い当ていて改めて感嘆してしまう、
「マラッカ」の熱帯の熱風が吹き荒れるような作風とは逆に、音の感触は全体的に冴え冴えしたものだが、なぜか私は真夏(や真冬)になると本作を思い出す、そしてなぜか頭の中で歌ってしまうのだ、もってけ泥棒ってね、
世紀末以降、男物スーツの基本になった三ボタン・ジャケット、二ボタンが主流だった当時においてはとてもマイナーな存在だったことは記憶すべき事柄、現在主流の細すぎるシルエットよりも本作ジャケットで使用されたもののほうが上品に見えるとおもう、