オーソドックスな研究書です。
筆者が一番読んで欲しいのは、戦後史に関心がある人よりも、
社会運動や雑誌創刊を盛り上げたい人たちなのではないかと思われます。
(ニート、フリーター、派遣切りなどについての)
本書では、全共闘などの運動を感傷的な英雄物語ではなく、冷徹に、
日本で初めて「現代的不幸」(アイデンティティの危機)に直面した世代・階層による
反抗(自分探し)として描かれます。
そして東大全共闘という特殊なものがその後を規定してしまった不幸(おそらく)に対し、
様々な可能性がありえたことが提示されます。
手法は今まで通りで、一般に公開されている資料によって、
いま思い描かれている「あの時代」のイメージを壊す1冊です。
(こういう研究手法はこの15年ほどで増えたもので、
かつての歴史研究しか知らない人には違和感があるかもしれませんが、
今では普通で、いろいろな人がいろいろなテーマで本を出しています)
ただ、すぐに買うのはファン、アンチ、関係者でしょうね。
ファンは歴史を鷲掴みにする魅力からほぼ肯定、
アンチはいつものように、全体の構造には目を向けず瑣末な点を挙げて全否定、
関係者は「私個人の見た(聞いた)話と違う」と否定するものと思われます。
評価が気になる方はこれを念頭に置いてください。
それはともかく、極めて厚いですが、文章が難解なわけではありません。
関心をもたれた方は序章とどこか1章だけでも目を通すことをお勧めします。
最後に、減点1は
・対象ゆえか前著よりダイナミズムに欠け、コップの中の嵐に見える
・そのためもあり、全体で1000ページでも良かったのでは
・もう1〜2年早く出ていれば
という勝手な思いからです。