私たちの生きる21世紀は「地殻変動」の時代といえるかもしれない。
従来信じていた「地図」は役に立たないかもしれない。これまで
定まっていた「ルート」がなくなってしまう可能性が大きいからだ。
これからの私たちの生活は、未知の大海原への航海に例えられるかもしれない。
もしそうなら、大切になるのは「羅針盤」である。時代が変わっても
普遍的な価値をもつ書物は「羅針盤」の役目を果たしてくれる。
本書では、各界で活躍するたくさんの方々が、その「羅針盤」として
多くの名著を紹介してくれている。様々な分野の先人たちが自身の
体験から紹介してくれる読書案内はまことにありがたい。
読書は個人的な指向・嗜好の強いものであるが、本書の読者は、
自分の感性と合った書物を手にするきっかけをつかむことができるだろう。
本書で多くの方々が共通して語っているのは、読書の効用ではなく「魅力」である。
この「魅力」こそ「羅針盤」のもつ、方向を見定める力と言えると思う。
ここで興味深いのは、特定の書物を紹介していない方々が何人もいることだ。
養老孟司「若い人に本を薦めるのは好きではない」
村上陽一郎「読書案内というのはおよそ役に立たないと思っている」
中井久夫「読書は、秘密結社員みたいにこっそりするものだ。私は推薦図書は書かない」
・・・しかしながら、こういった方々は博覧強記の読書家で有名である。
本文の中で読書の魅力を存分に語っている。
なお、この文庫の元になった本のタイトルは「二十一世紀に希望を持つための読書案内」
であったそうだ。編集部のまえがきにも「17歳を中心とする若い世代だけでなく、
世代を超えて読まれることを願っている」と書かれているが、誠にそのとおりである。
現代の高校2年生は学校行事やクラブ活動や大学受験準備・就職準備などで
なかなか読書の時間がとりにくいかもしれない。もしもそうなら、せめて本書を手にとって
こんな書物があるんだ、という気持ちをもつだけでもよい。そして読みたくなるのを待てばよい。
読書は大学に入ってからでも良い。就職してからでもよい。家庭を持ちながらでも良い。
定年退職してからでもいいじゃないか。読書がしたい。これは私自身の希望である。